「あれってなんだっけ?」は“舌先現象”
会話中に「あれ? あの名前が出てこない…」と苦しくなるあの感覚は、心理学で「舌先現象(Tip of the Tongue、TOT)」と呼ばれています。脳内には必要な情報が残っているのに、一時的に取り出せないエラーが起こっている状態です。いわば「記憶の検索失敗」とも言えます。
なぜ脳の検索エラーが起こるのか
- 脳の連携不調
左側頭葉(言語記憶)や前頭葉(検索・想起)同士の連携がうまくいかないと、答えが見つかりそうで見つからない“もどかしさ”が生じます。 - 記憶のラベルだけが抜け落ちる
特に人名や地名などは“ラベル”情報が少なく、脳内で思い出しにくいと言われます。意味は浮かぶのに名前だけ出てこない、という経験は多いはずです。 - 年齢や疲労の影響
年齢を重ねると、舌先現象の頻度が増える傾向があります。さらに、睡眠不足やストレス下では前頭葉機能が低下し、検索がうまくいかなくなりがちです。 - 会話中に伝染することも
グループで誰かが「あれ? なんだっけ…」と言い出すと、ほかの人も同じ単語を思い出そうとして、思い出せなくなる現象が起きる場合もあります。
舌先現象が起こったときの対処法
1. 周辺情報をたどる
思い出したい言葉を直接探すのではなく、関連するキーワードやエピソードを片っ端から口に出してみましょう。脳内の関連記憶が活性化し、正解を思い出せる可能性が高まります。
2. 音や文字の手がかりを探す
「たしかMで始まる名前…」など、最初の文字や似た響きの単語をいくつか声に出してみると、音韻的ネットワークが刺激され、正解が出やすくなります。
3. 一度あきらめて意識を逸らす
「あれ何だっけ!」と焦るほど、かえって出てこないもの。いったん他の話題や作業に切り替えると、しばらくして急に思い出すことがよくあります。
4. 他の人に助けを求める
誰かに「この間テレビに出ていたあの人…」と伝えると、ヒントをもらって思い出しやすくなることがあります。グループで考えると、余計に伝染するリスクもありますが、正解にたどり着くための手がかりも得やすいです。
舌先現象を減らすための日々の習慣
1. 記憶に“フック”を作る
人名などを覚えるときは、できるだけ多くのエピソードや関連情報と結びつける工夫を。脳内の“タグ”が多いほど、思い出しやすくなります。
2. 繰り返し&復習
子供の頃のように、書いて覚える・声に出す・クイズ形式で自分をテストするなど、意識的に復習すると記憶の定着率が上がります。
3. 「ど忘れノート」をつける
思い出せなくて苦戦した単語や名前を記録しておくと、自分がどんな言葉を忘れやすいのか傾向を把握できます。見返すことで記憶力アップにもつながるとされています。
4. 脳を健康に保つ
- 睡眠をしっかり取る
夜更かしや徹夜が続くと前頭葉機能が低下し、舌先現象が増えやすくなります。 - 適度な運動・リラックス
有酸素運動やストレスケアが、記憶を司る海馬の健康を保つのに有効です。 - デジタル機器との付き合い方
すぐにスマホで検索せず、一度は自分の頭で思い出してみると、脳内検索のトレーニングになります。
まとめ
「なんだっけ?」と頭の中で引っかかるのは、脳が記憶を必死に探している証拠。実は完全に忘れているわけではない場合がほとんどです。舌先現象は誰にでも起こりますが、日頃のちょっとした工夫でど忘れを減らし、スムーズに思い出せるようになります。ぜひ今回の対策を試してみてください。
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